■花と太陽と金色チョコボ 
07 おかえり

 


「ごめん、エアリス」
 その夜、セブンスヘブンに帰った俺はエアリスに謝った。
 店にはもう客が入っていて、ティファは忙しそうに料理を作っている。
 俺達は店の隅のテーブル席を取り、ティファの手伝いに走り回るエアリスを捕まえると、俺は立ち上がって頭を下げた。

 結局、エアリスのカーム行きは明日になってしまった。エルミナさんと会いたかったはずなのに、俺のせいで延期させたなんて申し訳ない。
 けれどエアリスは変わらずに優しく微笑む。
「いいのよ。悪いのはザックスでしょ?」
「え…、なんでザックス?」
「クラウドに甘えられたいからって、先に大事な説明をしなかったんだもの。ザックスがぜーんぶ悪いのよ?」
 『ね?』と、ザックスににっこりと笑うエアリスに、ザックスは顔を引きつらせた。
 …ていうか、何?俺に甘えられたいって何?
「ザックス…?」
 疑心暗鬼で振り返り見下ろすと、ザックスは冷や汗をダラダラと垂らしてる。
「いや、だって俺だって生き返ると思ってなかったし!こーゆー時なら、クラウドも少しは素直に自分から言ってくれるかなー…って、最大のチャンス…ぐあっ!」
 …とりあえずザックスの脛に蹴りを一発。
 店に迷惑にならないように、静かに地味で根にくるものを入れておく。
「…ク、クラウドさん…痛いデス」
 ザックスはテーブルにつっぷして肩を震わせている。
「うるさい。もういっぺん生き返り直してこい」
 足を抑えて痛みに耐えるザックスをほったらかしてエアリスに向き直る。
「明日、俺もカームへ行くよ。エルミナさんに直接謝りたい」
「ありがと。謝らなくていいと思うけど、でもクラウドが来てくれたらお母さんも喜ぶと思う。 2人共、お腹空いてるでしょ?今、持ってくるね」
 そう言って、ティファの元へ走って行った。


 再び椅子に座ると、テーブルにつっぷすザックスの脳天にゲンコツをさらに追加。
「痛ぇよ、クラウド…」
 恨みがましい目で見られても怖くなんかない。
「誰のせいだ」
「俺だって、言って欲しいんだぜ?」
「何の事か分からないな」
 俺に先に言わせようなんて甘い。筋金入りのひねくれを舐めるな。
 おかげでこっちは泣かなくていい所まで泣いた気がする。もう3年は好きだと言ってやらないと心に決めた。

「はい、おまたせ!」
 エアリスが大盛り料理を運んでくる。それを並べながら、悪戯っぽい笑顔を俺に向けてきた。
「ね、クラウド。ザックスの秘密をひとつ教えてあげようか?」
「ザックスの秘密?」
「うん、仕返ししたいなら役に立つかもよ?」
 クスクスと楽しそうに笑うエアリスに対して、ザックスは顔面蒼白だ。
「エアリス?!エアリス、何をいう気だ?!」
「あのねー、ザックスはねー、夜ねー」
「エア、エアリスさん?!やめてっ」
「クラウドを抱っこしてないと眠れないんだって」
「わああああああ!!」
「……」
 そういえば…俺を抱いてると落ち着くって言ってたな。でも、眠れないほどなのか?
「昨夜もね。どうせ眠れないからって、一晩中ミッドガルを走り回ってお金回収してたのよ」
「………へぇ、そうなんだ」
 ニヤリと俺の口角が自然と上がる。
「クラウド…?なんか、怖ぇけど…」
 汗だくのザックスに対して、俺は余裕の笑み。というか腹の中から湧き出る不敵な笑みが止まらない。
 そうか、そうか。俺は1人で寝られるけどな。
「クラウド?クラウド?!俺達一緒に暮らすんだよな?!」
 ザックスが本格的に焦りだす。
「さあな」
 冷たく言い放って食事を始めた。フン、ざまあみろ。
「クラウドー!? エアリスひでぇよ!なんで言っちゃうんだよ」
「だって私、クラウドの味方だもーん」
 きゃっきゃと楽しそうに笑いながら、エアリスが俺の肩に頭を乗せてくる。そこに答えるように頭を傾けると、トドメに見せ付けの笑顔をひとつ足した。
「な、エアリス」
「~~っ!! 勘弁してくれよぉぉ」
 ザックスの悲痛が気分が良い。なんて言ったらバチが当たるかな?
 でも、仕方ないよな。アンタはそれも了承して帰って来たはずだから。





 皆が楽しいのが大好きな、花のようなエアリス。


 皆が幸せなのが望みな、太陽のようなザックス。


 そんな2人が好きな、俺。



 今でも、これからも敵わない。



 大好きだよ。






      おかえり






end.




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