■花と太陽と金色チョコボ 
06 生き返った理由

 

「そもそも、どうして俺達は生き返ったと思ってる?」
 ザックスの問いに改めて疑問に思った。
 どうしてかと言われると答えに詰まる。
 俺はエアリスがそう言ったから、そのまま受け止めていた。仲間達もきっとそうだろう。でも、それって合っているのか?
「だって、それは…」
 答えられない俺の答えを分かっていたようにザックスは小さく笑った。
「エアリスにそう言われたから、疑問に思わなかったんだろ?」
「うん…」
「ま、それが正解で全てだな」
「?」
 ザックスは納得の答えだと頷くが、俺にはさっぱり理解できない。眉をしかめていると、改めてザックスは言葉を足してきた。

「俺はさ、オマケなんだよ、クラウド」
「おまけ?」
「そ。星が甦らせたかったのはエアリスの方。だから、エアリスが蘇られる環境を作った。お前達全ての人が、何の疑問も無く受け入れたのもそのせいだ」
「どうして、エアリス?」
「セトラの民だから。星はセトラの血を絶やしたくないんだ」
 エアリスは最後のセトラの民。星と心を通わせる世界でただ一人の人間だ。根底にある運命に関わることなんだと、自然とザックスの声も厳しくなる。
「セフィロスの脅威はなくなったけど、ジェノバの細胞を持つソルジャーはまだ沢山生きてる。星はそれを懸念してるんだ」
「…もしもまた同じ事が起こったら、エアリスの力を使うため…?」
「うん。俺達はカダージュ達の誕生を防げなかった。ライフストリームの中にいてもジェノバの脅威は防げない。地上で起こる脅威は地上でないと解決できないんだ」
「…俺じゃ、役不足だから…?」
 俺が地上にいるだけでは役不足だから、2人が蘇ったということなのだろうか。ジェノバに左右される俺は、逆に次の星の脅威になる人物なのかもしれない。
 自分の不甲斐なさを感じていると、チョンとザックスが俺の鼻先をついた。
「んなワケねぇだろ?一人で4人も倒しておいて何言ってやがる」
 余計な事考えるな、と、いつものちょっと叱るような、励ますような表情を向けてきた。


「ソルジャーの力とセトラの力は違う。何よりエアリスは血を繋げられる。言ったろ?星は血を絶やしたくないんだって」
 その言葉に俺は目を見開く。まさか、ザックスが――
「あー、勘違いするなよ?俺がエアリスの旦那になるんじゃないぞ?第一、ジェノバは俺の中にもある。セフィロスでさらに強化もされてる。一番混じってはいけない血だろ?」
「なら、なんで…」
「俺はナイトの役目、ジェノバ細胞に対する耐性が強いからな。エアリスの身に危険が及んだ時には、命に替えても守るのが星からの条件だ」
 『納得した?』と、ザックスが首を傾げて微笑む。
 だから、ザックスはエアリスに尽くすんだ…彼女が常に幸福である為に。
 でも、それじゃ、ザックスの人生は?幸福や自由はどうなるんだ?
「…ザックスは、それでいいのか?」
「全てを了承したから此処にいる」
「でも、それじゃ、神羅にいる頃と変わらない!」
 ザックスに自由が無いのなら、神羅の時と大差なんて無い。切なくて眉を寄せる俺にザックスは笑顔で言う。
「神羅とエアリスじゃ比較にもなんねーよ。 でもありがとうな、クラウド。俺のこと、心配してくれてるんだろ?」
 頬に小さなキスを送ってくる。俺は余計に切なくなった。


「今生、俺は最期までエアリスを守るけど、クラウドはそんな俺じゃ嫌か?」
「……」
「俺は、エアリスだけじゃなく、クラウドも守りたい。クラウドは強くなったから、クラウドにも守られたいとも思う。 だから、一緒にエアリスを守ってくれないか?エアリスだけじゃなくて、ティファもマリンもデンゼルも…大切なもの、守って行こうぜ? 2人で」
 いつの間にか、俺の瞳からは涙が溢れていた。
 狡いよ、ザックス…そういう事は早く言えよ…
 俺の両頬に手を添えてザックスが顔を上げさせる。ザックスは微笑んでいるんだろうけど、俺の視界は滲んでよく見えない。
 俺、昨日から泣きっぱなしだ。
「クラウド、返事は?」
「……っ」
 言いたくても声が出ない。もう少し待って欲しくてザックスに抱きついた。
 ザックスは黙って俺の髪を撫でて背中を叩く。


 安心して暖かくなる腕の中、だから嫌なんだよ気が緩む。

 
 緩んで、何もかも溶けてしまう。
 

 大好きでキライな腕の中……離れられるワケがない。






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