■花と太陽と金色チョコボ 
03 消えない不安

 


 一体どれくらいの時間がたったのか、俺の涙は落ち着いて、俺自身も泣き疲れてしまっていた。
 今も同じ路地裏で、ザックスは壁に背を預けて地面に座り、俺はその膝に跨り抱っこされている状態。
 外でコレは、結構恥ずかしい気がするけど、疲れきった俺にはもう麻痺していた。それに、ザックスから離れたくない。
「クラウド、タバコ吸っていい?」
 レノに貰ったタバコを出して聞いてくるから、小さく頷く。
 ライターの火が灯り、ザックスを照らす。火はすぐに消えて、代わりに紫煙が夜空にあがっていく。
「……」
 ザックスの口元をタバコに取られて、キスもしてくれないのかと寂しい気分になる。
「レノの奴、銘柄変わった」
「銘柄?」
「タバコのな。俺のと同じになってる」
 ほら、と、俺にタバコのパッケージを見せてくる。
 でも俺はタバコを吸わないし、レノが何を吸ってるのかなんて感心がない。
「…分からない」
「俺が何を吸ってたか、覚えてねぇ?」
 そんな事言ったって、アンタ、俺の前ではあんまり吸わなかったじゃないか。
 だから銘柄なんて見ていない。覚えてるのは、タバコの後の残り香くらいだ。今のザックスが吸ってるものと同じ香り。
「香りは、分かるけど…」
「なら、正解。レノの努力もちっとは無駄にならなかったかもな」
「レノが俺のためにそのタバコを吸ってたって言うのか?」
「アイツ、この銘柄嫌いなんだよ。それでも吸ってたって事は、お前に俺を忘れて欲しくなかったからじゃねぇ?」
 あのスカしたレノが、そんな繊細な真似をするだろうか。
 俺が疑心暗鬼な顔をしていると、ザックスは苦笑いをしてきた。
「アイツ、あれでもいい奴だぜ?」
 それは分かってはいるけどね、一応…


 でも、そのレノのタバコのせいで俺はキスしてもらえないし…なんて、拗ねるくらいなら自分で言えばいいのに。
 言えない俺はザックスにしがみついて、肩に顎を乗せる。そのまま目を閉じたら、なんだかウトウトしてきた。
 そういえば俺、数時間前まで戦闘してたんだっけ。
 セフィロスとカダージュたちの3人と。その後散々泣いてるんだから、当然疲れはもうピーク。
 トントンと、またザックスが背中を叩いてあやすから睡魔はますます加速して、意識は深く落ちていった。

 なぁ、ザックス…おやすみのキスもくれないの?

 アンタまだ俺の事好きなの?

 ザックスから感じる愛情は確かにあるのに、そんな不安が膨らんでいた。





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