■ 愛情ピラミッド 02 |
神羅ビルの上階にあるソルジャー1stの住居。 その一角にあるジェネシスの部屋のバルコニーから見下ろすミッドガルの町並みは、イルミネーションに包まれ円形の星空を作っていた。 クリスマスは昨日で終わったため、無くなったのはツリーとX'masの文字だけ。華やいだイルミネーションはそのままに、今度は意味を変えて新年に向けて今夜も光を放っている。 「来年は、ジェネシスの性格が良くなりますよーに!」 ザックスは1人、そんなイルミネーションに両手を合わせてヤケクソで祈ってみたりもしたが、所詮はただのイルミネーション。 「……、って…無理か…」 あのジェネシスに敵うはずがない。むしろ祈られた光が悲鳴をあげそうだと、ザックスはお祈りを諦めた。 「…俺が、ジェネシスの一番になれたら解決なんだろうけどさ…」 眉を寄せて零すザックスの悩みはいつも同じだ。 ジェネシスが大切にしているものは決して多くはない。 だがその分順番も明確で、ザックスはその中の最下層にいる。 「たぶん、りんごが一番?いや、LOVELESSかも」 呟きながら両手の人差し指を親指を合わせて、三角形の形を作った。これがジェネシスの愛情のピラミッドとするならば、当然最頂部はそうだろう。 「それからアンジールとセフィロスと両親…バノーラ村もかもな」 ピラミッドの中を視線で辿り、底辺の中心で止まる。 「俺はこの辺?」 そのまま視線を端まで移動。 「この辺だったりして…」 そこまで言ってザックスは腕を解き、大きな溜め息を付きながらテラスの柵につっぷした。 「…駄目だ…自分で言って落ち込んだ」 愛情に順番というものは無いのだと人は言う。 けれど、ジェネシスから感じるそれは順番を付けられているようにしか思えないほど明確で、ザックスは真剣に考えずにはいられない。 ジェネシスの中でもっと大きな存在になって、認められたい。 自分が大切だと思っているのと同じくらい大切にされたい。 そのためにはどうしたらいい? どうすればそんな自分になれるだろう? ジェネシスはそのヒントをくれない。 ザックスにとっては、どんなマテリアを使うよりも難解な問題だった。 「仔犬。いつまでそこにいる」 「……」 そしてやっとバルコニーにやってきたジェネシスがザックスに近づく。 「バカ犬は寒さが好きなのか?」 「……」 そして、ザックスの背後に立つと、そのまま赤いコートの中にすっぽりとザックスを包み込んだ。 ほのかに香るりんごのワインの香りと、暖かな体温がザックスを包む。 「もう少しここにいたいか?」 「……ぅん」 難しいけれど、だからといって諦めずにはいられない。 それもまたザックスにとってのジェネシスだった。 |
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