■ 恋人がドSなんですが、どうしたらいいですか?5題 かえって悪化したら、 3.たまにはやり返してみなさい |
「仔犬、貴様何様のつもりだ」 「え…?」 ジェネシスの質問の意図が分からず、俺は頭が混乱する。 なんで睨んでるんだ? 睨まれるような事を言ったか? それとも、これだけで睨まれるほど、俺って嫌われてたのか? 悲しいとか、辛いとかより、理解できない事態にどうしたらいいのか本当に分からない。 だけど、ワケが分からずオロオロするばかり俺の目の前で、ジェネシスはこれ見よがしに「これだからバカは」と呆れてため息をついたものだから、俺もついにキレる。 「何がバカだよ!ワケ分かんないのはそっちだろ!」 そして一度防波堤の壊れた感情は、ダムが壊れたみたいに次から次へと言葉になって溢れ出してきた。 「いつもいつも俺の事バカにして!それも愛情表現のひとつかと思って我慢してたけど、アンタはそればっかだ!それしか無い!バカのひとつ覚えなのは、アンタの方じゃないか!!」 他人を揶揄して楽しむのはジェネシスの悪い癖。でも、その癖だって、本当に親しい人間にしか見せない事を俺は知ってる。 だから弄られるのも最初は嬉しかった。でも、それだけじゃいつしか不満になってたんだ。 「俺は嫌なんだよ、そういうの!気持ちはちゃんと言葉で伝えて欲しいし、俺に分かるように言って欲しい!俺が分かんなきゃ、伝わったことにならないじゃないか!」 不満で不安で…それで化膿してくみたいに、だんだん気持ちはぐちゃぐちゃになって、もう自分じゃ手当て出来なくなってた。 「もしそういうのが嫌いで…そんで俺の事もめ…、面倒で、き、…きらいになったなら…っ、そう言えばいいだろ…っ!」 言ってる内に我慢してた涙がボロボロと零れてきて、止まらない。 「もっと早く言ってくれれば…、俺だっ…て、こんなに…ぇ、うぇっ…」 ボロボロと流す涙をゴシゴシと擦りながら、さすがにここで泣くのは卑怯だよなとは内心で思った。でも、ジェネシスは泣き落としが通じるような奴じゃないから、まあいいっか…。 万が一でも胸が痛めばいいんだコンチクショウ。 そう思ってたのに 「無駄に泣くな。耳触りだ」 「……」 返ってきた辛辣な言葉に感じたのは、絶望よりも虚無だった。 |
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