■ 優しい部屋 
03 

 


意識は繰り返し浮上し、力尽きては拡散する。


毎日がその繰り返しだ。




その数えられない何度目かの繰り返しの中で、クラウドはひとつの事を思い出していた。









…そうだ…花…








いつか見たかもしれない存在。

それは確かに花というものだった。









花は…?










いつも変わらぬ白い部屋の中を、クラウドはゆっくりと視線を動かせる。

花はあった。

ベッドの傍にある小さなテーブルの上にただ一輪。

白い花瓶の中でそれは、クラウドが気付くのを待っていたかのように大きな白い花弁を垂らせていた。








……








クラウドにその花の名前は分からない。

だが、それはとても懐かしく、胸を締め付けるほどの思いを宿す花だった。


彼に代わって守らなければいけなかったたった一人の少女。

その少女が大切に育てていた花。



クラウドの光を無くした瞳が僅かに揺れた。









…ごめん







…エアリス……









鼻の奥から額を槍で突かれるような痛みが走り、視界は歪む。


立ってもいない足場が崩れ、クラウドは再び闇の中へと落ちていく。









嫌だ




もう行きたくない…








だが、クラウドの意思は力にはならない。







<…もう少しだよ、クラウド…>





明るい少女の声が、クラウドを励ますように囁いていた。










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