■ 優しい部屋 
02 

 


やがてクラウドは、再び目を覚ます。



白い天井。

白い床。

何も変わらない白い世界。



どれくらいの時間を眠っていたのかは分からない。
ここには時間がない。



時間の流れの無い空間の中で眠りと覚醒を繰り返す。
ただ、それだけのこと。



毎日毎日、
他に何も出来ぬまま。

かつて中毒を起こした、あの頃の自分と同じように―――















俺は…














その癒えぬ傷に人形のように整った表情が僅かにゆがむ。

何も出来ない事を繰り返すだけの空しさに虚無感が襲った。

自分はいったい何がしたいのだろう。

このままでいいのだろうか。



だが、浮かび上がった正常な意識は形になる前に再び拡散されていく。

今のクラウドに、その意志を形にする力は無い。








俺は…










身動きの出来ないクラウドの意識の中で、形の無い一筋の涙が流れ落ちた。


大きな悲しみから逃げた。


取り返しの付かぬ罪に背をそむけ続けた。




違う。



逃げてもいないし、背を向けてもいない。


だが、受け止める事も出来ず、拒絶する事も出来ず、どうにもならない自分を責めたててここまで来てしまった。






会いたい。



会って許されたい。


彼に










ザックス―――













その名を呼ぶように、色の無くなった薄い唇が微かに動く。


が、それで力尽きたようにクラウドの視界は形を捉える力を失い、意識は再び眠りの中に落ち始めていった。


その落下に逆らえぬように瞼が閉じられようとした時、その白い闇の端に昨日まではなかった何かが写る。









……花…?








だが、力なく落ちていく意識の中では、その花の存在さえ正しく捉える事は出来なかった。






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