■ After The Battle 
第二章 
第1話 金の糸 04 


  

 新しく配属された新人兵士達が、それぞれの任務に慣れ始めた頃――その試験は開始される。

『ソルジャー試験』

 それは、全兵士に対し毎年6月に行われるソルジャーになるための唯一の試験であり、ソルジャー志願者必ず通らなければならない関門だ。
 試験内容は緻密な素行調査を受けることから始り、精密な身体検査、筆記による科目試験、ミッションによる実戦試験など、多岐に渡る内容が数日間に渡って段落的に行われ、志願者は各々の任務を怠ることなくそれらに合格し続けなければならない。
 そして最終試験である適正検査を合格して初めて候補生となり、ソルジャーになる為の手術を受ける資格を得る事が出来る。
 この厳しい条件の元で行われる試験の合格率は極めて低く、適性検査までたどり着くだけでも全体の20%。適正検査合格に至っては7%を切る。それほどに『ソルジャー』という存在は狭き門だった。
 だがそれでも、神羅に向かった若者たちは等しくその道を選ぶ。それはひとえに『セフィロス』という絶対的な英雄の求心力に他ならない。
 ニブルヘイムからやってきたクラウドもまたそんな1人であり、例に漏れず彼も今回のソルジャー試験を受けていた。


 フロアに電子音が鳴り響き、そこ集まった兵士達が静まりかえる。と、そこにいた全員が壁面に設置された巨大パネルを注目した。

『actual fighting examination passers』
─実戦試験合格者─

 パネルに表示されたその一覧に、フロアに集まった兵士達から一斉にどよめきの声があがる。
 歓喜する者、力なく項垂れる者、悔しさのあまり毒を吐く者、それぞれの受験結果がありありと表れる。
 クラウドはその一団の隅で、ひとり静かに拳を握った。

ID:N0094j228w
NAME:Cloud Strife
POINT:927(TOTAL:20115)【cleared】
─クラウド・ストライフ【合格】─

「よしっ」
 小さな声で呟き、コクリと頷く。周囲の者達と比べると表情もほぼ変わらず、大きな動きも無い。が、そのアイスブルーの瞳には自信の色を浮かぶ。
 このまま行けば、自分はきっとこのソルジャー試験に合格する。クラウドは、その手応えを確かに感じていた。
「トップ通過とは、さすがですね」
 フト、背後からかけられた声にクラウドは振り返り、顎をあげた先にあった顔に眉間に皺を寄せた。
「また、あんたか」
「覚えていてもらえたとは光栄です」
 口の端だけをあげてニッコリと笑うその背の高い男は、配属部署に移動する際にエントランスでわざとぶつかって来たあの男だった。「小さすぎて気がつかなかった」と小柄なクラウドを笑った男。
 言葉使いは一見丁寧だが、このどこか腹黒さを感じる雰囲気にクラウドの印象は極めて悪い。出来ればあまり関わりたくない、クラウドはそう直感していた。
「別に…名前も知らないし」
「まあ、そう言わずに。僕も合格しました。候補生まであと一歩です。お互いに合格すれば同期のソルジャーになるわけですし、上手くやっていきましょう。あ、僕の名前はルクシーレです。どうぞよろしく」
 言うだけ言うとその男は軽く手を振り、さっさとその場を後にする。クラウドはパネルと見上げるとルクシーレと名乗った男の名を探し、その成績に思わず顔を歪ませた。
「最下位じゃないか」
 クラウドには遠く及ばない成績であり、総合点から見ても彼は常にギリギリのラインで通過をしてきている。確かに通過した事に間違いないが、あそこまで余裕の態度を取っていい成績とは思えず、クラウドは眉をしかめた。
「変はやつ。同期もごめんだ」
 そんな本音に自分の表情を隠すように俯くと、足早にフロアを出て行った。

 最終試験である適正検査は、成績順に行われる。
 クラウドのそれは、明日の朝一番に予定されていた。


 

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