■ After The Battle 第一章 第4話 黄泉の密約 04 |
変わらぬ日常を送っていたミッドガルに、突如としてその爆発は起こった。 爆発場所はミッドガルの中心にあたる神羅ビル、その67階。ピンポイントで起きた爆破はビル全体を揺らすほど巨大なものだった。 爆風による熱が広がる中、セキュリティーシステムはけたたましい警告音を鳴らしながら、機密情報を保有する全てのブロックのシャッターを次々に落とす。その遮断により、常駐する社員はもちろん、たまたま訪れていた一般市民全てが巻き込まれ、容赦なく各フロアへ閉じ込められて行く。 いったい何が起こったのか。どこへ逃げればいいのか。何一つ状況が分からぬまま戸惑い逃げ惑う人々は、閉鎖された空間の中に取り残され、成すすべもなく恐怖に飲まれていった。 「チッ、あと少しだったのに」 エマージェンシーにより強制的にシャットダウンされた端末を前に、ジェネシスは忌々しそうに舌を打った。 神羅のメインコンピューターへのハッキング中に中断させられた処理は、進入経路の抜け穴を塞ぐまでには至ってはいない。逆追跡される事はないが、システム回復後は対策が取られ二度とこの経路は使えなくなるだろう。再び抜け穴を探さなければならない。その面倒さゆえの苛立ちだ。 「いったい何の騒ぎだ」 他のフロアと同様にジェネシスの執務室もまた資料棚や窓にシャッターが下ろされ、耳障りな警告音が鳴り響く。このような非常事態が発令された場合、ミッドガルで待機する全ソルジャーはその対応に当たらなければならない。1stであるジェネシスも類に漏れず同様だ。 案の定、その非常招集を知らせる携帯が鳴り、ジェネシスはそれを乱暴に取った。 『ジェネシス。今、どこに…ああ、どうやら君は社内にいるようだね』 電話口からも聞こえる警告音に気がついたのだろう、声の主であるラザードは居場所を尋ねるよりも先に理解を示した。 「五月蝿いぞ!何の騒ぎだ」 『67階で爆破が起きた。原因はまだ不明だが、あそこには科研が保有しているモンスターがいる。逃亡させるわけにはいかない。直ちに鎮圧の指揮に当たってくれ』 「相棒が行けばいいだろう」 『連絡がつかない。今は君しかいない、すぐに向かいたまえ』 反論は無用と電話を切ったラザードにジェネシスは小さく舌を打つと、レイビアを片手に現場へと向かって行った。 ジェネシスがソルジャー用の秘密通路から67階に辿り着くと、そこには荒れ狂ったかのような炎が不規則に渦巻いていた。 「…ッ?!マテリアか」 自然の炎とはまるで質が違う。 足が速く意志を持ったまま周囲を飛び回り、乱気流のようなうねりを起こしながら周囲を焼き尽くす。その動きは明らかにマテリアから発動されたものだ。 そして、本社ビル内という巨大なプレッシャーの中、これだけのものを発動できる人間はジェネシスを含め数えるほどしかいない。 「セフィロス…いや、まさか相棒か…?」 「サー・ジェネシス!」 ジェネシスの後を追う様に通用口から飛び出てきたソルジャー達がジェネシスの元に集まる。ジェネシスはその面々を一通り見渡すと、手短に支持を出した。 「お前達はこのフロアにいるモンスターの討伐に当たれ。逃亡の有無、サンプリング状況は問わない。存在する全てのモンスターを殺し、カケラも残さぬよう焼き尽くせ」 「全て、ですか?」 『鎮圧』を目的に集められたソルジャー達はその指示に一瞬、戸惑いを見せる。鎮圧を目的とするならば、わざわざ逃亡していないモンスターはおろかサンプリングされたものまで殺す必要はない。が、ジェネシスはスッと目を細めると冷え切った声を呟いた。 「その方がよほど幸福だろう…」 「……」 「行け」 科研のサンプルとして生き地獄の中で破壊されながら死ぬよりも、潔い死を。それこそが尊厳だと言わんばかりの指示を残し、ジェネシスは1人フロアの奥へと走って行った。 |
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