■ After The Battle 
第一章 
第1話 銀の糸と黒い珠 02 

  
 

 亜熱帯地域にあるゴンガガはその8割が山と深い森が占め、それら山々と森の恩恵により人々は生きる為の水と気温、地熱の冷却化を確保していた。
 その恩恵の最たる場所に村は存在する為、必然的に村から離れれば離れる程モンスターに適合する環境となっていく。
 なかでも、村の北東にある森はモンスターも多く、その奥へ進む事は古より村の禁忌とされているほどだった。
 その森の中を今、セフィロスは淡々と進んで行く。
「……」
 時より木の陰から古びた機械のような泣き声を立てて現れるのは、3つの頭を持ったインセクトキマラ。ストップウェブをかけてくるやっかいなモンスターだが、セフィロスはそれを見ても眉ひとつ動かすことはなく先制攻撃でファイガを放ち一撃で瞬殺。
 轟音の炎に悲鳴すら書き消され塵を残す事も許されぬ程の勢いで焼かれ崩れていくモンスターを視界の端で確認すると、それ以上の事は必要が無いとばかりにセフィロスは再び何事も無かったように歩き出していった。
 目指すは森の最深部。
 そこには天然の資源である魔晄の泉が存在する。

 魔晄は星の中を巡る資源のひとつだが、その強すぎる力は人体にはあまりにも有害であり、触れれば重症な中毒を起こすだけでなく、時には死を招きかねない。魔晄の噴出口の近隣に住む者にとっては、まさに厄介な代物でもあった。
 が、神羅はそれをエネルギーに代える技術を開発した。
 膨大すぎるエネルギーを回収し人々から脅威を取り除くだけでなく、それを実りあるものに替えて人々に豊かさを提供する。神のごとく全ての平和をもたらす救いの技術となったそれは、当時、最も魔晄の力にに困窮していたミッドガルの街に膨大な富と安泰を与え、神羅を国家に相当する世界でもっとも巨大な企業へと変貌させた。
 神羅は今も尚、その技術をもって魔晄を探しその手を広めようとしている。
 セフィロスが就いた今回の任務も、その一環だった。
 強力な魔晄エネルギーに対し耐えうる事が出来る身体をもつものまた、ソルジャーだけの特性だった。
 

 魔晄の泉が近づくと、あたりの森は静けさを増してくる。
 生けるものなんびとたりと近寄ってはいけない張り詰めた空気がまとい出すのは、人の中にある本能が危険信号を発するからなのしれない。
 その中をセフィロスは淡々と歩調を変える事なく歩いていく。
 遠くに感じるような小さな耳鳴りを感じ、人としてのあらざる境界を越えるような錯覚に囚われそうになったその時、セフィロスの耳には何やら聞き慣れないメロディーらしきものが小さく聞こえてきた。
「……ゴンゴンゴ…ガガ、…ゴゴ…~ン……」
「……?」
 まるで子供のような高い声だった。
 思わず顔をあげて辺りを見渡したが、森の景色は何も変わっていない。
 当然だ、ここは人が入れるエリアではない。ましてや子供などいるはずがない。が、そう思い直したその時、再び声はした。
「♪ゴンガンゴンガガ、ゴゴンガ~ン♪」
「………」
 はっきりと分かる子供の声。どうやら歌を歌っているらしいが、歌にしては意味が無く旋律にセンスも無い。首を傾げながらセフィロスはさらに奥へと進み、さほど高くは無い小さな崖を降りた。
「♪ガンガンゴンガガ、ガガンガ~ン♪」
 一段と大きくなる声は間違いなく人の子供の声だ。理由は分からないが間違いなく誰かがいる。そう思うとセフィロスは面倒そうに眉をひそめた。
「♪ガガゴガコガコ、ガガゴンゴ~ン♪」
 そんなことにお構いなしに歌のテンションはますます上がる。いい加減『ガ』と『ゴ』の羅列にうんざりし、声をかけようと枝葉を避けたその時、目の前の光景にセフィロスは思わず息を飲んだ。



01 ←back ◇ next→ 03





inserted by FC2 system