■ 聖夜に恋人達が交わすのは 03 |
…と、待てよ? (…あれ?) ザックスとの暖かいハグの中、クラウドはある事に気がつき目をパチクリさせる。 ザックスからのプレゼントはこのネックレス。 では、あのオーブンの中にあったものは? もしかしたら、夜中に置くつもりだった大真面目に用意したサンタからのプレゼントなのだろうか。 いや、いくらお祭り好きのザックスとはいえ、そこまでするだろうか。 こんな愛情深いクリスマスプレゼントの後だ。 それを知っていたかどうかに関わらず、サンタのプレゼントを貰ってもリアクションに困る。 (ど、どうしよう) すっかりムードの溶け合ってしまったハグ中の中、クラウドの『うっかり発見しちゃいました作戦』は決行すべきものなのか。 改めて突きつけられた選択肢にクラウドはオロオロと挙動不振に視線を泳がせた。 キッチンの方を見ては目を逸らし『どうしよう、どうしよう』と自問を繰り返す。 (本当にどうしようっっ) ついに訪れた限界にザックスに泣き縋るようにしがみついた時、耳元では耐え切れないとばかりにザックスが小さく噴出した。 「あはは、クラウドってホント可愛いなー!」 「え?え?」 「すっげー、可愛い!もうサイコー!」 可愛い可愛いと言って上機嫌に頭を撫で回してくるザックスにクラウドの頭の中は疑問符だらけだ。 「な、なにザックス?」 「見たんだろ?オーブンの中」 「え?」 いきなりの核心にクラウドが大きく目を開くと、ザックスはその手を引いてキッチンのオーブンへと向かった。 オーブンの中には巨大なプレゼントの包みが今も収まっている。 「開けてみ?」 ザックスに促され、クラウドがワケもわからないままそれに触れる。が、その感触は紙だけだった。 「あれ?」 とても軽く、まるで中身が無いような感触にクラウドは首を傾げる。 軽すぎる感触のそれを開けてみると、中に入っていたのはメーセージが書かれたカードがひとつ。 『 ハ ズ レ こっそり見ちゃう悪い子には、サンタさんは来ねーぞ』 「………」 そのメッセージにクラウドの表情は固まる。 つまりこれは、先走ってプレゼントを開けてしまった子供に対抗する為に、サンタが仕掛けていった悪戯ということか。 あっけに囚われるクラウドの後ろで、ザックスは1人満足して何度も頷いていた。 「見なかったってことはやっぱりクラウドはいい子だな。うん。うん。サンタさんは嬉しいぜ」 「……っ」 ハズレカードを持つクラウドの手はいつしか細かく振るえ出していた。 「ザック…」 このプレゼントを見てからというものの、本気で悩みに悩んだ自分が恨めしい。 必死に頭を回転させて、作戦を立てた自分が恥ずかしい。本気で。 「ん?なに?」 だが、それもこれも全ては… 「ザックスのバカーー!!もうお前にはプレゼントなんかやらない!ぜーーーーーったい、やらない!!」 激高するクラウドの怒りは拳となってザックスの頭に襲い掛かる。 「うぉ!危ねっ!」 「避けるな!いっぺん死ね、ザックス!」 「げ、いい子のクラウドとは思えない発言」 「うるさい!お前がいい子になれっ!!」 さきほどまでの甘いムードはどこへやら。 まるで大パーティのような賑やかさで、2人のイヴは過ぎて行く。 聖夜に恋人達が交わすのは、どうやら愛の睦言だけでは無いらしい。 end. |
02 ←back ◇ |