■ candid shot 
05 candid shot

 

 翌日。


「んー…無いなぁ…」
 ソルジャールームのソファに座り、1人携帯をカチカチと触るザックスに、隣のカンセルが声をかけた。
「あ?何が無いって?」
「昨夜の写真。俺のクラウドの貴重なプリティジェラシー、誰も撮ってないのかよ…くそぉ」
 クラウドの為を思えば撮らせるわけにはいかない。が、撮ってるなら見たい。隠し撮りをされる事に慣れているザックスにはザックスなりの複雑な心理がある。クラウドには、決して言えないが…。
「ちぇ。残念」
 ネット上に流れていないのを安心するべきか、可愛い恋人のシーンが残らなかった事を残念がるべきか。
 ザックスがその半々が混じった表情で溜め息を付くと、携帯のフリップを閉じた。
 そんなザックスの横で、ある心当たりに沈黙を続けていたカンセルは、決心したように恐る恐る口を開いた。
「…もしかして『非常階段』か?」
「え?!なんで知ってんの?!」
 カンセルからの予想外の発言にザックスが食いつくと、カンセルは「ああ、やっぱり」と言わんばかりの気の毒そうな哀れんだ目でザックスを見つめる。
「俺じゃ無ぇよ。英雄」
「なにぃ?!」
「よくは知らんが、今朝『非常階段でおもしろいものを撮った。これでまたバカで遊べる』ってほくそ笑んでたぜ?あれ、やっぱりお前の事だったのか…。そうか…バカって言ってたからそうかとは…」
「マジか!!オッサンあの場にいやがったのか!」
 セフィロスが撮っているかもしれない。その可能性だけを察し、一気に血の気が上がったザックスは勢いよくソファから立ち上がった。
「サンキュー!カンセル!取り返してくるぜ!!」
「え、マジで行くのか?!だって、お前…」
 そのままカンセルに返事も聞かずにソルジャーフロアを全力でダッシュしていった。

「……わざわざイビられに行くかね…」

 やれやれ、バカはこれだから。と、カンセルは1人肩を竦めていた。






end.


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