■ 三日月の島 
04 

 

 どこまでも続く青い空と無限に広がるような大海原。
 世界はこの2色の青しかないのかと思えるほど広大に広がる青の中を、一機の小型飛空挺がエンジン音を響かせて飛んでいた。
 その機体に大きく描かれたのは『神羅』の文字。青の世界には不釣合いな鋼鉄の街からきた救助艇だった。
「こちらレノ。ポイントA-503-D4。ターゲットはまだ未確認だぞ、と」
『了解。その近郊に無人島がある。そちらへ向かってくれ』
「あいよ、と」
 定時連絡を済ませたレノは操縦桿を握り進路方向を変える。が、その進路は目標地点よりもはるか南に向いていた。
「…行かないのか?」
「あん?直に行きたいわけ?」
 それに気がついたルードが隣のレノに声をかける。だが、レノはうんざりとしたため息で返してきた。
「オートパイロットの飛空挺からの信号が突然消えたのが5日前。その海域に残された残骸から見て墜落に間違いなく、漂流者もなし。
 とくれば普通はほぼ絶望と言いたい所だが、乗っていたのがあの2人だ。死体にでもならない限り、大人しく漂流なんかしやいない。…だろ?」
「うむ」
「そもそも、クラス1stが2人も揃って異常信号も送らずに墜落する方がおかしいんだぞ、と。おおかた操縦席にも座らず、よろしくやってたんだろーよ」
「……」
「どーせ、今頃も変わんねぇって。例えば、あーゆーところで、だ」
 レノが顎で差した先には、三日月の形をした島があった。ルードが望遠装置を起動し、その島の様子をパネルに写しだす。
「上陸できそうな場所はあるか?」
「今、探す」
 最大限に拡大した画面を左右へと動かした。距離があるためどこもハッキリとは分からないが、どうやら三日月の内側には浜らしきものがあるらしい。
「ここか?」
 そこを充分に注意をしてみると、キラリと何かが光った。
「ん?」
 機体を移動するとさらにもう一箇所、計2箇所からキラリと何かが光る。おそらくは何かの金属の反射。察するところ、バスターソードと正宗だろう。それだけが分かれば充分だった。
「いた」
「ああ、間違い無さそうだ。んじゃ帰るか」
「行かなくていいのか?」
「下手に行って殺されるのは御免だぞ、と。一度帰ればアイツラもお迎えの準備くらいすんだろ。じゃーな」
 操縦桿を大きく動かし、レノとルートを乗せた飛空挺は島から遠く離れて行った。






「セ、セフィロ…ッ!」
「なんだ」
「飛空挺の…音が聞こえ…ッ、…ゅ…救助じゃ…ァ」
「だろうな。近づいたら撃墜してやろうかと思ったが、去って行ったようだ」
「…撃墜とか…ん…ぁッ、…だ、ダメだろ…ッ」
「今、来られていいのか?」
「そ、…だけど…っ、…んんッ、ん!」
「明日また来るだろう。どうやらそれまでの自由のようだ。さぁ、終わりの時間が見えたぞザックス?抵抗している場合か?」
「…っ!ずりぃ…」
「ツケを払ってやると言っただろう。いいかげん諦めろ」
「だったら砂を使うなよ!痛すぎるから嫌だって…!!」
「仕方がない。強行突破だ」
「ヤッ…!!…ヒ…ぁ、ぅんン…ッッ!!」


 何も無い所だから行為も普通だろう…と、甘い夢を見ていたザックスの艶声は、三日月型の島の大地へと消えて行った。






end. 




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