■ urge 2 
08 

 

 手のかかる大切なものと悪魔のような幼馴染、そして薄情な親友に囲まれ、アンジールの日々は賑やかに進む。

 
「アンジールー!」
 大渓谷のモンスター討伐シュミーレーションをクリアし、今日も仔犬は元気いっぱいにアンジールに走り寄った。
「な!な!見た?見た!?今の最後のメテオショット!回転連続技からのトドメの攻撃!決まってたろ?」
 巨大モンスターを指定されたターンで討伐。そんな実力と戦略を併用したミッションもザックスはこなせるようになってきている。アンジールはその成長に目を細めずにはいられない。
「おつかれ。なかなかだったな」
「だろ?俺、カッコよかったよな!」
 アンジールに褒められ大はしゃぎで喜ぶザックスを少し黙らせるため、アンジールはポケットから小さな紙包みを取りだす。と、その中味をザックスの大口にポイッと放りこんだ。
「ふん?!」
 突然のことに何事かと驚きながらも、素直に咀嚼するザックスはすぐに目を輝かせる。
「何これ?クッキー!?おいしい!なんか甘いのがある!」
「キウイジャムだ。美味いだろう?」
「うん!まだある?」
 そして手元をキョロキョロと覗き込むザックスの頭にアンジールは手を当てると、そのまま軽く押しやった。
「あるが残りは後だ。これから50時間の短期ミッションに行ってもらう。それがクリア出来てからだな」
「50時間もお預けかぁ…早めに切り上げて帰って来ちゃダメ?」
「構わない。作戦を立てるのはお前だ。危険がない限り俺はそれに従う」
「え?」
「このミッションには俺が同行する。俺のミッションにはまだ連れて行けなくても、お前のミッションに俺が同行する事は出来るからな」
「ア、アンジ~ルゥ~!!」
 アンジールと一緒にミッションに行ける。その喜びにザックスの目はキラキラと一層輝いていた。
 
  
 
 
  アンジールにとってザックスは、ソルジャーという特殊部隊における後輩の1人だ。
  歳が若いせいか礼儀知らずな所はあるが、その分元気で、とびきり明るく、とにかく人懐いまるで仔犬のような性格。ザックスと聞いて思い出すのは、いつも楽しそうにしている満面の笑顔しかない。
  その笑顔は今、一番アンジールに向けられている。
  苦労する事も多いが、アンジールはいつだってこの笑顔に救われ癒されるのだ。




「じゃあ、アンジール!俺がリーダーなんだからこのミッションで『いつ死んでも』とかは無しな!」
「そうだな。お前といると楽しすぎて、死んでなどいられないな」
「それから!さっきのクッキーをおやつに持って行こう!」
「調子に乗るな」

 コツンと、ザックスの頭をアンジールの指先が軽く小突く。
 その手は限りなく優しく、この存在が愛しいのだと、物語っていた。





end.


 
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