■ クリスマスの夜だから 

 

「クリスマスの夜だから、キスしよう」
「え?」
「キスするんだ。どんなに喧嘩してても、離れた所にいてもクリスマスの夜には必ずキスをするって約束しよう。毎年、これからずっと」

 アンタがそんな事を突然言い出すから、俺はすごく驚いたんだ。
 だって、当然だろ?
 俺達は友達で、恋人のいない者同士で寂しくクリスマスをしようって、イルミネーションの中を歩いている最中だったんだから。
 だから、がんばってそっけなく答えてみた。
「…酔ってんの?そうゆうことは、恋人を作って言いなよ…」
 でもアンタは、珍しく真顔になってこう言った。

「恋人にしたいから言ってんの」
「……」
「俺、本気だぜ?クラウド」

 俺は何も言えなくなってしまい、真っ赤になって俯いた。

「クラウド?」

 《嬉しい》よりも《安心》、《幸せ》よりも《緊張》がふくれたような感覚で全身が熱くなる。
 何だよこれ…どうしたらいい?

「クラーウド」

 そんな初めての感覚に戸惑っているのに、なんでそんなに嬉しそうな声出すんだよ…

「な、クラウド。約束。いいだろ?」


 ……。


 もしも「うん」と言ったら、アンタはきっとあのいつもの笑顔で笑うんだろう。
 俺が一番好きな、一番見ていたい、あの太陽みたいな暖かい笑顔で。


 それは早く見たいけど…


「クラーウド?」


 だけどザックス、ごめん…
 今は言えない。

 俯いた顔が上げられないんだ。
 これじゃあ、せっかくの笑顔が見れない。
 だからごめん…今は言えない。



「返事くれるまで、ずっと待ってっから」



 そう言ってアンタは俺の手を握り、自分のコートのポケットに入れた。
 ずるい。
 そんな風にして待つなよ、ますます…言いづらくなるじゃないか…


 手の温もりがやけに暖かくて、寒いはずの夜なのにそんなのちっとも感じない。
 それに、賑やかだとばかり思ってたザックスも妙に静かで…
 ああ、こんな面もあるんだなと、新しい発見に嬉しくなる。




 クリスマスの夜だから、キスをしよう。
 なんて…
 クリスマスの夜がどれほど特別なのかは分からない。
 けど…
 もう少しだけこうしていたいから、今夜はいつもより少しだけ、長ければいいなと思う。



  Merry Christmas My Zack.






end.












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