■ 「あと5分」の至福 |
窓の外が明るくなり、陽が昇り始めた頃。セフィロスはベットの中から携帯を取り、面倒見の良い方の親友に電話をかけた。 『セフィロス?どうした?』 「アンジール、困ったことになった」 早朝からの電話だというのに機嫌を悪くする事なく返事が出来るのはさすがアンジールと言った所だが、いつもそうして貰っているセフィロスからすれば、それは普通で当たり前の事だ。 『何があった?』 よって、セフィロスには申し訳ないという気持ちがない。 「ザックスが起きない」 『起きない?どういうことだ?どこか具合が悪いのか?』 そして、そんな関係における用事というものは、えてしてどうでも良い事が多くなって来る。 「いや、元気だ。だが、何度起こしても「あと5分」と言って起きない」 『……』 「アンジール。どうしたらいいんだ?」 当然、そんな内容にアンジールは呆れるしかない。 『……放っておけ。もしくは、お前が殴ってでもたたき起こせ』 「…だが…」 『セフィロス。ザックスが気に入ったからと、俺から無理矢理教育係の担当を奪ってまで連れて行ったのはお前だ。だったらお前がしっかりと面倒を見ろ』 「…しかし…」 『俺は「ザックスはまだ子供だからお前には無理だ」と言ったはずだ。その反対を押し切ったのは昨日の事だぞ?もう弱音か?』 「…そういうわけでは…」 『だったら、朝起こすくらい自分でなんとかしろ!朝飯もちゃんと食わせろよ?ついでにお前もちゃんと食え!いいな?分かったな!』 「…あ、ああ…」 『以上だ。遅刻するなよ』 「…わかった。じゃ…」 そして電話を切ろうとセフィロスが耳元から携帯を離した途端、アンジールのオマケの説教が始まりだす。 『それから!何度も言うがくれぐれもザックスに手を出すなよ!アレはまだ14歳だ!犯罪だからな!いいか、セ』 それを無理矢理通話ボタンでブチ切り、フリップを閉じるとセフィロスはそれを適当にシーツの上に放り投げた。 「ザックス。いいかげん、起きろ」 「…あと5分…」 「とっくに5分は過ぎてる」 「…ぅん…」 ブランケットの中でモゾモゾと小さな身体を丸くし、ザックスはさらにセフィロスの腕の中にもぐりこむ。そのまま柔らかく長い銀の髪を握ると、くんくんとセフィロスの匂いを嗅ぎ嬉しそうに微笑み擦り寄る。 セフィロスはそれをくすぐったそうに笑うと、ザックスの黒髪に頬を寄せた。 アンジールには言えなかったが、この姿があまりに可愛くて、起こすに起こせなかったのだ。 「そんな可愛い顔をしていると、また襲うぞ?」 「…エヘヘ」 頬を染め、はにかんだように笑うザックスの鎖骨には昨夜の甘い痕が残る。セフィロスはそれを指先でなぞると、愛しそうに両腕でザックスを包み抱きしめた。 「バレたらアンジールが激高だな」 そう言いつつも幸せそうに微笑むセフィロスは、事実を隠す気もなければこれから改める気も無い。 ザックスが14歳だから犯罪?それが何だと言うのだ。貴重なザックスの14歳という時間を据え膳のままにしておく方がおかしい。これから日々変化していく身体や声、心の全てを自分の肌で感じとっておかなくてどうするというのか。 楽しく、可愛く、どんなに見ていても飽きない存在。それをセフィロスは手に入れたのだ。 こんな何気ない朝の時間でさえ、これほどに愛しい。 愛するなという方が無理だ。 だが、非常に惜しいが、そろそろ本当に起きなくてはならない。 「起きろ」 セフィロスの手がザックスの身体を辿り、ブランケットの中を下へとくだる。そこにあった小さく丸い双丘を手の平で掴んだ。 「ひゃ…っ!」 ザックスから甲高い悲鳴が漏れる。 ザックスの尻はまだ小さく、セフィロスに片手で充分に揉める。その動作を1度、2度、3度…。 「セ、セフィロス…!」 「起きるまで続けるぞ?」 「や…っ、まって、ちょっとま…っ!」 「起きるか?」 「わかった!おきる!おきる、けど…!」 丸くしていた身体をモジモジさせ、ザックスが真っ赤になった顔を上げる。その目は、半泣きの状態のまま、眉は困り果てたようにシュンと沈んでいた。 「ん?どうした?」 「……ァ…ソコも…、…ぉきちゃった…」 「……」 いわゆる普通の14歳。思春期真っ盛りのザックスはちょっとした刺激にも過敏に反応する。 しかも、昨夜にその甘美な味を覚えたばかりなのだ。反応しないほうがおかしい。 「…あと5分、だな」 セフィロスは綺麗に口角をあげるとザックスの頬を両手で包み、シーツの中に沈めながらその唇を重ねる。 「…ふ、ん…」 ザックスは素直に腕を回ししがみ付くと、まだどこかおそるおそるとした気配を残したまま、その身体を開いた。 朝の5分。 それは誰しもが持っている、心地良い至福の時間。 だが、どの時間よりも早く進む魔の時間でもある。 その『あと5分』は、当然5分では済まされない。 「…ん、…ァ…セフィロス…、携帯…鳴って る…っ」 枕元の傍で鳴る携帯の音が煩そうに、ザックスは汗ばんだ額を振る。 「アンジールだろう。後で説教確実だ。お前も一緒に受けろ」 「…ぇ、なんで……?」 「今、終るわけにはいかないからだ。…動くぞ」 「…ッ、…んぁ…あっ!」 ご注意あれ。 end. |